或る女の徒然

ゆるく記録

カレーショップの話

うちの近所に子犬みたいな名前のカレーショップがある。決してチェーンでなく、恐らく古くからこの商店街で店を営んでいるんだとおもう。

ビルの二階にその店はある。店に続く細い階段は白いタイル張りで、壁にはメニューのパネルが貼り付けられている。

古くからあるのだろうなというのは、例えば店のドアノブが取れちゃってるところから分かったりする。入る時は引き戸なので取っ手は不可欠。そこに確かに存在するのだが、帰る時は押し戸なのでドアノブが取れて無くても全く困ることはない。

喫煙席のソファは赤いベロア張りで、年季がはいっているかのような雰囲気を醸すが、そこまでボロボロということは全くなく、清潔感があった。店のおよそ半分の木の椅子の方が、所々剥げてしまって心地よい古さを醸している。

 

私がこの店に初めて来たのは旦那とともにこの街に引っ越して来て間もない頃のように思う。

正確には忘れてしまったが、窓際の禁煙席に座ったような気がする。

窓側は、商店街の街並み人通りが二階から見下ろせ、なかなか良い席だ。あちらから老夫婦がゆっくりとあるいてくる。こちらからは、ジャンパー姿の男性が乗った自転車がスピードをおとしながらすーっとやって来る。何かの楽器をもった学生らしい女性やサラリーマン、スーパーの袋からネギの頭をのぞかせた主婦、その右手には3歳くらいの男の子。そんなありふれた人々の行き交う流れを何と無く上から眺めるにはもってこいなのであった。

カレーはとても美味しい。しかしそれにもまして、安さが大きな魅力だ。店の名前のついたカレーセットはサラダとコーヒーがついて630円だし、ミニサイズなら530円。 

トッピングをつけたければそれも良い。

もっと食べたければスパゲティ(決してパスタとは呼ばない)をつけることもできる。

カレーだから、食事が提供されるのも早い。

 

店には漫画本も結構置いてある。少年〜青年マンガばかりだが、カレーを食べたあとはコーヒーをすすりながら、マンガを読むという贅沢も、ひっそり用意されている。男性客たちはこのあたり堪らないみたいである。

 

ある年の瀬、大掃除の合間にお腹が空いて二進も三進もいかず、この店に旦那と来たことがある。ちょうどその年はDavid Bowieが亡くなった年で、私にとっては大きくはないが小さくもない穴が空いた感じのする時だった。

そんな時にこの店でカレーをたべていたら、StarmanやUnder Pressureが流れてきた。Bowie以外にもQueen、Three Dog nightなんかがかかっていた。ずっと聴いていたくなる。もはや根っこがはえて大掃除どころではない。美味しいコーヒーもあるし。

クラシックでも歌謡曲でもJpopでもない、70〜80年代のこのゾーンが心地よいのだ。

 

 そういったわけで、カレーライスが美味しく食べられるのはその店の佇まいと言うか在り方というか、そんなものたちも多分に影響している。きっと、またすぐ行くでしょう。